東北大学金属材料研究所
量子エネルギー材料科学国際研究センター
センター長 青木 大
東北大学金属材料研究所附属量子エネルギー材料科学国際研究センター(通称:大洗センター)は、材料試験炉(JMTR)の隣接施設として1969年に設立され、原子力分野における材料開発やアクチノイド元素を含む物理・化学の研究を進めてきました。
現在、大洗センターでは共同利用施設として、発電用原子炉の構造材料の研究や、高速炉・核融合炉など将来のエネルギー源のための新材料の開発、アクチノイド化合物や関連する量子物質の新物質探索や新奇物性の探索、新型核燃料の開発、放射化分析、デブリに関する研究など、多岐にわたる研究が進められています。国内外から毎年100件程度の共同利用の申請があり、このうち四分の一は国外からの利用を含む国際共同利用課題です。
大洗センターには、透過型電子顕微鏡や3次元アトムプローブなどナノスケールの分析までを一貫して行える装置や極低温・強磁場下の量子振動効果測定ができる希釈冷凍機などがあり、管理区域におけるナノ解析、物質探索、極限環境下の物性測定が行える世界でも有数の施設です。
2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故以降、原子力材料関連研究を取り巻く環境は大きく変化しました。安全・安心に寄与する研究や廃炉に向けた研究への社会的ニーズが高まる一方で、原子力の将来に必要な人材育成の重要性が一層認識されるようになりました。現在、原子力材料研究の根幹を成す中性子照射実験は、主に海外の施設を利用せざるを得ない状況が続いています。また、大学においては、原子力の黎明期を支えた研究者が世代交代を迎える一方で、放射性同位元素や核燃料物質を扱う共同利用研究施設の安全な管理・運営には、多くのリソースが必要とされています。
このような状況の中で、大洗センターは、原子力材料研究の枠を超えた新たな研究にも視野を広げ、ホットラボや先端分析・物性計測の能力を活かして、研究者コミュニティーに貢献していく所存です。上記の研究や「夏の学校」などを通じた大学院生や若手研究者の人材育成も大洗センターならではの重要な取り組みであると考えています。
今後とも、皆様のご支援とご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。