研究ハイライト

外部機関によるJMTRを利用した研究

照射下の電気伝導度

原子寸法因子によるスエリング発現機構

九州大学 木下智見 他

本研究室における研究の目的は、核融合炉の第一壁、絶縁材、ブランケット材および超伝導材等の開発および評価を統一的に行うことにある。さらに、放射線照射による材料の新しい機能性の発現にも注目している。JMTRを用いた研究課題に関連する研究内容の概要を以下に示す。

(a)高速中性子照射下でのセラミックス中の転位ループの核形成・成長に対する電場効果
核融合炉絶縁材料として期待されているイオン結晶は高電場を伴った放射線照射下にある。また、結晶中の点欠陥は電荷を付随するため、それらの離合集散過程において、電場の影響を受ける。そこで、本研究では電場・非電場下における高速中性子照射下での点欠陥集合体の形成過程を電子顕微鏡で観察し、α- Al2O3の点欠陥集合体の形成過程およびそれに対する電場効果を明らかにすることを目的とする。 この目的のために、これまでに、原子炉(JMTR)内中性子照射用電場印加サブキャプセル(図1)の開発をし、開発したサブキャプセルを用いて、電場・非 電場下での中性子照射を温度630Kで、照射量5.7x1024 n/m2まで行った。照射後の試料を電子顕微鏡(JEM-2000EX)で観察した(図2)。その結果、以下のことがわかった。
・電場・非電場下照射試料で格子間型転位ループが形成された。
・両試料における転位ループの体積密度および直径には差がほとんどなかった。
・電場下照射試料のみにAlコロイドおよびキャビティが観察された。
これらの結果より、電場は欠陥集合体、特に同種イオンの集合体の形成に影響を与えることがわかった。


図1.電場下照射用サブキャプセル。(a)概観図、(b)断面図



図2.中性子照射したα-Al2O3の微細組織を示す電子顕微鏡写真。
図中の白いドットは格子間型転位ループに相当する。(左)非電場下および(右)電場(E=100kV/m)下で照射した。

(b)セラミックス絶縁体の電気伝導におよぼす照射効果
セラミックス絶縁材料は核融合炉内の放射線環境下で使用される。電場を伴った放射線照射下において、セラミックスの電気伝導度は一時的に増加(RIC) したり、永久的に絶縁劣化(RIED)する可能性がある。そこで、核融合炉環境下におけるRICやRIEDの評価およびそれらの原因を解明するために、まず、超高圧電子顕微鏡内における電気伝導度の「その場」測定が可能な試料ホルダー(図3)の開発を行い、そのホルダーを用いてα-Al2O3の電気伝導度 を電子照射下で「その場」測定した。その結果、以下のことがわかった。
・電子照射・非照射下において非オーミック電流−電圧特性が観測された。
・電子線量率に比例する照射誘起電気伝導(RIC)が観測された。
・熱励起伝導度(TSC)が観測された。
・照射量10-4 dpa (displacement per atom)まで照射誘起絶縁劣化(RIED)は観測されなかった。


図3.本研究室で開発した、電子照射下における電気伝導度「その場」測定用試料ホルダー


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