1.放射能と放射線
参考:電気事業連合会発行 原子力・エネルギー図面集2015
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- 放射線について説明します。
- 原子は、原子核と電子から出来ています。
原子核には、安定なものと不安定なものが有ります。 - 不安定な原子核は、放射線を出して安定な原子核に変わります。
- 放射能は放射線を出す能力のことを言います。
- 放射能の強さを表す単位をベクレルと言います。
- 1ベクレルの放射能をもつ放射性物質は、1秒間に1回、放射線を出します。
放射線によってどれだけ影響があるかを表す単位をシーベルトと言います。
2.放射能と半減期
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- 放射能に関連してよく使われる用語「半減期」について説明します。
- 先に述べましたように、不安定な原子核は、放射線を出して安定な原子核に変わります。
つまり、放射能は時間とともに小さくなります。 - 放射能が半分になる時間を「半減期」と言います。
- 半減期だけ時間が過ぎると、放射能は、最初の1/2になります。次の半減期が過ぎると最初の1/4に、その次が過ぎると最初の1/8にと順に小さくなります。
- この放射能の減衰の様子は、数学的には指数関数で表すことができます。
3.半減期と放射能
ウラン-238酸化物(UO2 ,1.1×10-5g)
半減期=4.5×109年,放射能=0.12Bq
ウラン-235酸化物(UO2 ,1.1×10-5g)
半減期=7.0×108年,放射能=0.77Bq
プルトニウム-239酸化物(PuO2 ,1.2×10-5g)
半減期=2.4×104年,放射能= 2.3×104Bq
セシウム-137酸化物(Cs2O,4.5×10-6g)
半減期=30年,放射能= 1.4×107Bq
半減期=4.5×109年,放射能=0.12Bq
ウラン-235酸化物(UO2 ,1.1×10-5g)
半減期=7.0×108年,放射能=0.77Bq
プルトニウム-239酸化物(PuO2 ,1.2×10-5g)
半減期=2.4×104年,放射能= 2.3×104Bq
セシウム-137酸化物(Cs2O,4.5×10-6g)
半減期=30年,放射能= 1.4×107Bq
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- 半減期と放射能について考えてみましょう。
同じ体積でも半減期が異なれば放射能の大きさは異なります。 - 縦0.1mm横0.1mm高さ0.1mmの立方体の物質の放射能を考えてみましょう。
- 例えば、ウランのように半減期の長いものは放射能は小さな値となります。
- 具体的には、ウラン-238の酸化物では、0.12Bq(ベクレル)、ウラン-235の酸化物では、0.77Bqです。
- プルトニウム-239の半減期は、24000年ですので、プルトニウム-239酸化物では、23000ベクレルになります。
- セシウム-137は、もっと半減期が短く30年ですので、放射能はより大きくなります。
4.原子炉内でのセシウム-137の生成
100万kWeの原子力発電所の中では熱-電気変換効率を33%とすると一秒間にウランの核分裂反応がおよそ1020回起こっている。
ウランの核分裂に対してそれぞれ6%の確率でセシウム-137が発生するので、1年間発電を続けると年間2.0×1026個のセシウム-137が生成される。
放射能としては1.4×1017ベクレルとなる。
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- 福島第一事故で放出されたセシウム-137について説明します。
- 原子炉内で生成されるセシウム-137の量は、比較的簡単に見積もることができます。
まず、原子炉で1秒間にどれぐらいの核分裂が起きているかを計算します。 - 100万kWの電気出力を持っている原子力発電所の中では、熱-電気変換効率を33%とすると一秒間にウランの核分裂反応がおよそ10^20(10の20乗)回起こっています。
- ウランの核分裂に対してそれぞれ6%の確率でセシウム-137が発生します。
- 1年間発電を続けると年間2.0×10^26(2.0掛ける10の26乗)個のセシウム-137が生成されます。
- これを放射能で表すと1.4×10^17(10の17乗)ベクレルになります。
- 福島第一発電所事故では、この様にして蓄積されたセシウム-137の一部が環境に放出されました。
5.放射線の種類
参考:電気事業連合会発行 原子力・エネルギー図面集2015
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- 放射線の種類について説明します。
- 物質中の分子や原子を電離する能力を持つ粒子線、あるいは電磁波のことを放射線と呼びます。
- 粒子線には、α線、β線、中性子線が有ります。
- また、電磁波には、γ線、X 線が有ります。 放射線のエネルギーはエレクトロンボルト(eV)で表されます。
- 1eV は1.6x10^-19 (1.6掛ける10の-19乗)ジュール(J)です。
6.放射線のしゃへい
参考:電気事業連合会発行 原子力・エネルギー図面集2015
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- 放射線のしゃへいについて説明します。
- 放射線には、それぞれ物体を通り抜ける性質がありますが、放射線の種類によって物質を透過する能力が異なります。
- 放射線の種類にあわせた物質を用いることにより放射線をさえぎることができます。
7.eV(エレクトロンボルト)
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- 原子などの小さな粒子のエネルギーを表すエレクトロンボルトという単位について説明します。
- 放射線の強さはエレクトロンボルト(eV)で表します。
- 1eVとは、単位電荷を持った粒子が1Vの電極間で加速されるエネルギーです。
- 加速されるエネルギーは同じですが、電子は質量が小さいので、大きく加速され時速210万キロにも達します。
- 一方、アルファー粒子は質量が大きいので、到達速度は、電子の100分の1にしかならず、時速2万5千キロです。
8.1eVの電子とアルファ粒子の速度
ジェット飛行機 時速900km
音速 時速1225km
1eVアルファ粒子 時速25000km
第二宇宙速度 時速40320km
1eV電子 時速2.135×106km
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- 1eVの粒子の速さを実感するために、1eVの電子とアルファ粒子の速度を他のものと比べてみましょう。
- アルファ粒子の速度は、新幹線やジェット飛行機よりもずっと速く音速の20倍にも達します。
- 電子はさらに速く地球の重力に打ち勝ち宇宙へ飛び去る速さ、いわゆる第二宇宙速度の50倍に達します。
- これは、光の速さの1/500程度です。
- 実際の放射線のエネルギーは1eVよりもずっと大きいので、電子は光に近い速さで飛んでいることになります。